国民主権原理と自由主義は両立しない: 日野の一応公式ブログ

共和政の国において、国家元首は選挙によってえらばれる。

厳密にいうと、制限選挙や間接選挙、貴族政体の共和政の国家も存在しうるが、いずれにせよ、ローマ教皇やダライ・ラマのように宗教的儀式によってえらばれるわけでもなく、イギリス国王や我が国の天皇陛下のように世襲をその絶対的な要件とするわけでもなく、ある「適正な手続き」によって選ばれた「個人」が、統治権の一部乃至全部を握るのが、共和政というものである。

言い換えると、君主政の国においては、君主の「地位」に意味があるのに対して、共和政の国ではその地位にある「個人」に意味がある。

例を挙げると、ヴァチカンにおいてはローマ教皇はそれで一つの人格であるとみなされる。ベネディクト16世も、フランシスコ教皇も、同一の人格であるとされる。

一方、アメリカにおいては、バラク・オバマとブッシュ親子とでは、全く正反対の評価がされる。

「大統領だから素晴らしい」ではなく、「素晴らしいから大統領」なのが、共和政国家だ。

そのような国においては、全ての人間が平等であることが大前提とされる。不当に高い地位にいる権力者は、国民から嫉妬を受けて、やがてはその地位から引きずり降ろされる。

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中国においては、歴史的に指導者には「徳」が求められ、「徳」のない君主を民衆が引きずりおろし、「徳」のある人間を新しい君主として擁立することが、歴史的に認められていた。

今の中国は君主制度を廃止して、表向きは共和政となっている。国家主席は「独裁者」としての権力を振りかざす一方で、民衆相手には自分に徳があるかのように宣伝する。そうでないと、自身の立場を正当化できないからである。

共和政の国においては、独裁者すらも安眠することができない。すべての人間が平等であるという建前を堅持する以上、自分が如何にその地位にふさわしいかを誇示する必要があるからだ。

また、共和政の国における腐敗とは、国民同士が平等ではなく、格差のあることに起因する。

アメリカにおいては国際金融資本が、中国においては共産党幹部が、不当に力を持っていると国民が認識しているからこそ、腐敗する。

共和政の国においては、権威の存在は許されない。何者かが権威をもつと、それは国民の間での平等の原則を揺るがすことになる。毛沢東による文化大革命も、ポル・ポトによる知識人大虐殺も、それは「平等」の理念を守るための善意から行われたものであった。

アメリカにおいても、国民が他国の貴族の爵位を得ることは、原則として禁止されている。それは、貴族制度自身が共和政にとって有害である、との認識があるからである。貴族制度の本質は権力ではなく権威であることに鑑みると、アメリカのこの憲法の規定の存在は合理的である。

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共和政の国における唯一の「権威」と言えば、「正当な働きによって正当な報酬を受け取る」ということだろう。

しかし、アメリカの共和政を腐敗させているのは、利潤を受け取るのを良しとする、その資本主義的なシステムそのものである。アメリカにおいては、政治家に権威を与えず、また、貴族的な権威をもった階級が生まれる余地のない制度が構築されたが、その代わり、経済力を持ったブルジョワ階級が、権威をも併せ持つこととなった。

経済力は必然的に政治的な権力を持つ。つまり、権威と権力の双方を、ブルジョワ階級の人間が持つことになる。

それは、即ち、経済的な強者による、経済的な弱者への支配につながる。強者が弱者に対しても「平等への愛」をもって接していれば、それでも共和政は腐敗しない。しかし、ひとたび強者が自分への権力を守る方向へと動き出すと、格差は固定化し、弱者は永遠に弱者のままとなる。

それを防ぐためには、強者に対して弱者への愛を強制するか、或いは、経済力のある者の資産や収入に高い税率をかけて経済力のない物に分配するか、しかない。だが、そのような国家においては、もはや、自由は失われている。

そもそも、一度権力を握ったブルジョワが、自らその権力を手放すことは考えにくく、また、ブルジョワの権力の源泉がその経済力であることを考えると、個人の私有財産に重点を置いた近代資本主義国家においてはブルジョワ独裁を排除することは、できない。

レーニンは、暴力による革命によって共産主義国家を建設し、この問題を解決した。ヒトラーは、民意によって平和裏に憲法を停止してブルジョワの財産を没収することにより、この問題を解決した。

両者の共通点は、彼らは不平等を憂える大衆の支持を得て、その大衆から自由を奪ったことである。

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