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2017年5月 7日 (日)

「倭建命」は三人いた!邪馬壱国と景行天皇の関係――ヤマトタケル説話の考察(5)


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 さて、これまで私が『古事記』の表記である「倭建命」ではなく「ヤマトタケル」とカタカナで表記したのには、理由があります。

 私は、『古事記』における「倭建命」のすべてが、小碓、いわゆるヤマトタケルではない、と考えているからです。

 その根拠は、『古事記』の系譜にあります。

『古事記』では、倭建命に関する系譜は次のようになっています。

1.景行天皇の息子に小碓がいる。彼の別名が「倭建命」である。

2.「倭建命」の息子に仲哀天皇がいる。

3.仲哀天皇の妻は神功皇后と大中津姫である。

4.大中津姫の父親は大江王、母親は銀王であり、どちらも景行天皇の子供である。

5.そして、大江王の母親で景行天皇の妻であるカグロ姫(迦具漏比売)は、「倭建命」の曾孫で須売伊呂大中日子王の子供である。

6.「倭建命」の子供に若建王がおり、彼と飯野真黒比売の間に産まれたのが、須売伊呂大中日子王である。

7.飯野真黒比売は「倭建命」の曾孫であり、父は杙俣長日子王、祖父は息長別王である。

 整理すると、

「倭建命」の息子と「倭建命」の曾孫が結ばれた。そして、二人の孫、つまり「倭建命」の曾孫であり「倭建命」の来孫でもある女性と「倭建命」の父親が結ばれた。さらに、その二人の孫娘、つまり「倭建命」の姪であり「倭建命」の来孫でもあり「倭建命」の仍孫でもある女性が、「倭建命」の息子と結ばれた。

「来孫」とか「仍孫」という聞きなれない単語が飛び交っていますが、要するに、『古事記』の記述が正しければ、「倭建命」の玄孫よりもはるかに後の世代の子孫が「倭建命」の息子や父親と結ばれているわけです。

 と言っても、そんなこと、あり得る訳、ありません。


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 ここで、系譜を次のように整理したらどうでしょうか?

「倭建命」(α)の曾孫と「倭建命」(β)の息子が結ばれた。そして、二人の孫、つまり「倭建命」(α)の来孫であり「倭建命」(β)の曾孫でもある女性と「倭建命」(γ)の父親が結ばれた。さらに、その二人の孫娘、つまり「倭建命」(γ)の姪であり「倭建命」(β)の来孫でもあり「倭建命」(α)の仍孫でもある女性が、「倭建命」(γ)の息子と結ばれた。

 当然、「倭建命」(α)と「倭建命」(β)と「倭建命」(γ)とは、別人です。

 私は既に応神天皇は仲哀天皇の子供ではなく孫であることを論証し、その際に『古事記』においてもっとも後世の造作の疑いが強いのは、説話でも年代でもなく、系譜であることを述べました。

 そうだとすると、この場合も「倭建命」(α)と「倭建命」(β)と「倭建命」(γ)の三者を同一人物視するために系譜の造作が行われた、という可能性が出て来ます。

 景行天皇の息子であるのは、仲哀天皇の父親である「倭建命」(γ)です。そう考えないと景行天皇は自分の玄孫や昆孫を妃にしたことになってしまいます。つまり、他の「倭建命」(α)と「倭建命」(β)は景行天皇よりも前の世代の人間です。

 ついでに言うと、上記の分析を読めばお分かりかもしれませんが、「倭建命」(α)の方が「倭建命」(β)よりも前の時代の人間です。

 従って、私たちが一般に「ヤマトタケル」と呼んでいる小碓は「倭建命」(γ)のことである、ということになります。


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 では、「倭建命」(α)と「倭建命」(β)とは、何者なのでしょうか?

 まず、この二人が大和王朝の人間であることは考えられません。もしも大和王朝の人間であるならば、その事を明記すればよいのです。

 だいたい、どうして「ヤマトタケル」と呼ばれた人間が三人もいるのに、わざわざ「兄殺し」の異端児の記録だけを残すのでしょうか?『古事記』が天皇家がわざわざ不利になる形での造作をするわけ、ありません。

 従って、「倭建命」(α)と「倭建命」(β)は大和の人間ではないのです。

 ここで問題になるのは「倭」の文字です。

 既に私は倭の五王が大和王朝ではなく九州王朝の大王であることに触れました。つまり、「倭」は「ヤマト」ではなく「ツクシ」の可能性もあるのです。(この点、古田武彦先生も『倭人伝を徹底して読む』で触れられています。)

 つまり、「ツクシタケル」です。

 そして、九州王朝では「クマソタケル」の例もある通り、大王に「タケル」の称号をつける習慣がありました。

 ならば、「倭建命」(α)も「倭建命」(β)も、さらには「倭建命」(β)の息子である若建王も九州王朝の大王であった――そう考えることが可能になります。というよりも、『古事記』に若建王の系譜が詳細に記されていることからも、そう考えるのが妥当でしょう。

 そうすると、若建王の孫が景行天皇の妃の一人になっているのですから、彼は世代的には卑弥呼の前の代の九州王朝の大王である、ということになります。

 これからは、「倭建命」(α)を「ツクシタケル一世」、「倭建命」(β)を「ツクシタケル二世」と表記していきます。


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 さて、以上のことから次のことが言えます。

『魏志』「倭人伝」には卑弥呼の前に「男王」が存在し、彼の治世が「7,80年」つまり倍数年暦を直すと「35年~40年」続いた、と言います。その男王が若建王でしょう。

 若建王はツクシタケル二世の子ですが、「若」が付くのは単にその子供であるというだけでなく、若い頃に即位したからという可能性もあります。でないと、35年以上もの長期政権を維持する前に寿命が来ていたでしょうから。

 しかし、彼の死後に倭国は内乱で乱れます。「倭国の乱」です。

『魏志』「倭人伝」によると、倭国の乱は数年続きました。この戦いは最終的に卑弥呼を女王とすることで決着がついた、ということになっていますが、四国の狗奴国を始めとする諸国は邪馬壱国に反対の立場をとっていたようです。

 そうした中、狗奴国と同じく四国にあるものの、弥生時代から九州と文化的に近い侏儒国(高知)と、近畿地方で九州と四国の争いには傍観を決め込んでいるものの、九州王朝出身の神武天皇を開祖とする大和王朝は「中立」の立場に立ちます。

 そうした中、大和王朝の景行天皇は若建王の孫娘であるカグロ姫を妃の一人とします。つまり、大和王朝は「邪馬壱国寄り」の立場であったわけです。

 そのこととヤマトタケルによるクマソタケル暗殺とは、無関係ではないでしょう。

 さて、次回からはこのことをさらに掘り下げるために、ヤマトタケルの出雲・東国遠征の説話を考察します。


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ヤマトタケル説話の考察

第一回 ヤマトタケルの「クマソタケル暗殺説話」ってどんな話?

第二回 「クマソタケル暗殺事件」の背景に壱与の影!?

第三回 247年3月24日の「卑弥呼暗殺」と魏の内政干渉

第四回 狗奴国は四国にあった

第五回 「倭建命」は三人いた!邪馬壱国と景行天皇の関係

第六回 ヤマトタケルは出雲に亡命してイズモタケルを暗殺?

(以下、続稿予定)

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【聖典より】

 日本が大東亜戦争に敗れたのも、敗れるには敗れる理由がある。中心を失っていたのであります。即ち日本天皇のみこころに背いて米英に戦争を布告したから負けたのであります。大東亜戦争直前の御前会議で、天皇が如何に平和愛好の心で、宣戦に反対せられたかは知る人は知っているのであります。しかし、明治の初めに既に「万機公論に決すべし」という民主的な御誓文が出て、それが日本の国是になっていましたので、時の勢力階級の大衆(軍閥)の戦争賛成論の多数決のために戦争が始まったのでした。これは、天皇をロボットにした結果であったのであります。(谷口雅春先生『古事記と現代の預言』p.119)

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