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2020年1月23日 (木)

『とある科学の超電磁砲』に嵌ってしまった


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 昔々、高校時代にとある有名なオンライン作家の方が、私の書く小説が『とある魔術の禁書目録(インデックス)』に似ている、と言われたのです。

 最初に言っておきますが、本題の『とある科学の超電磁砲(レールガン)』とは、別作品です。

 私はそれを聞いて「え?そんな有名作品に私の作風が似ている、って?社交辞令でも嬉しい!」と思ったのですが、実はその頃、私は『とある魔術』を読んではいませんでした。

 だって、ネットで『とある魔術の禁書目録』を検索すると、やたら女の子ばかり出てくる宣伝動画が出てきたりして、正直「これ、絶対、面白くない」という先入観を持っていたからです。

 で、昨年末、たまには古典的なアニメも見てみよう、と思い『とある魔術の禁書目録』をうかいやでレンタルしたのでした。

 感想は・・・うん、私の小説と確かに似ている面があるね!アニメと原作は違うとはいえ、原作がいろいろ詰め込まれ過ぎていることは、アニメ版を見ても判ります。

 だって、冒頭部分で主人公が御坂美琴とドンパチしているのに、ヒロインは御坂美琴じゃなくて禁書目録(インデックスなんかい!と、初回から作者にツッコみたくなるし、「魔術」と「超能力」という、特殊設定を二つも使っているのに主人公・上条当麻の中二病的なセリフな多すぎるせいで、物語の設定の把握が遅れるという副作用付きです。

 上条当麻の中二病的なセリフは、恐らく原作からでしょうから、ちょっと、原作者がミスっているよな、という感満載。

 未読の方のためにあらすじを紹介すると、こんな感じです。

超能力が科学的に解明された近未来。そんな世界の日本の東京西部に存在する、学園都市。そこでは人口の八割を学生が占め、最先端の科学技術と特別な教育カリキュラムにより、学生・生徒たちが超能力の開発に勤しんでいた。
主人公の高校生・上条当麻は超能力が「レベル0」の「無能力者」である上に、勉強もできない(中学生の御坂美琴に夏休みの宿題を手伝ってもらうレベル)劣等生であるが、何故か右手で他人の超能力を打ち消すことができる「幻想殺し(イマジンブレーカー)」という特殊能力だけは、持っていた。
そんな上条当麻の前に「インデックス(禁書目録)」を名乗る、幼女の姿をしたシスター(本人は大人の女性とみてほしいみたいだが、精神年齢も幼い)が現れる。超能力すら科学的に解明された学園都市では「宗教」や「魔術」は迷信だと思われているが、インデックスは自分が「魔術師」だと名乗る。そして、魔術師たちの世界に上条当麻は巻き込まれていく――

 で、冒頭部分で上条当麻が記憶喪失になるわ、魔術師一切無関係の超能力者同士の抗争が起きるわ、設定を把握しようとしているうちにストーリーがどんどん展開して行ってしまうのです。

 もっとも、だからと言って、駄作かと言うとそうではありません。面白いキャラクターもいますし、(作者の無知が露呈しているものもありますが)キリスト教に関する設定も興味深かったりします。

 「超能力が科学で解明された世界」という設定も、「魔法が科学で解明された世界」ならば『魔法科高校の劣等生』の例がありますし、「超能力は科学で解明できたけれど、魔術は解明されていない」等と言うのは興味深い設定だとは思います。

 だから、この作品の最大の失敗は、上条当麻の中二病気質もそうですが、インデックスがヒロインであることと言えるでしょう。題名が『とある魔術の禁書目録(インデックス)』なのにインデックスが活躍しない、これは作者の設定ミスと言わざるを得ません。

 しかし、それはインデックス以外の女性がヒロインらしい活躍をしていることが理由ですので、やはり多くのファンがいるだけのことはあります。様々な問題を抱えながらも、楽しめる内容になっているのは、作者の能力でしょう。

 特に御坂美琴については、最高のキャラだと思います。アニメ第三期では、上条当麻が随所随所で頼りにしているのは、御坂美琴です。

 アビニョンから御坂美琴に電話する場面なんか、御坂美琴のことを上条当麻が認めた瞬間みたいで、感動的でした。そもそも、その電話の内容は日本にいる人間であればだれでもよかったものなので、日本にいた親友の青髪ピアスよりも御坂美琴の方を上条当麻が大切に思っていることが示された場面でもあります。

 ネット上の考察サイトとかで既に述べられている場面ではあると思いますが、この場面では上条当麻が「幻想殺し」の正体について知らなかったことから「記憶喪失」が発覚します。つまり、上条当麻は「記憶喪失」になる前は「幻想殺し」という能力の正体を知っていたことが示唆されるのですが、私は原作しか読んでいないものの、アニメ化されていない新約部分の考察サイト等を見る限り、記憶喪失前の上条当麻がどのぐらい「幻想殺し」を知っていたか、についてはまだ原作でも出てきていないみたいです。

 さて、そんな御坂美琴が主人公なのが、『とある科学の超電磁砲(レールガン)です。今年に入ってから『とある科学の超電磁砲』も新シリーズがアニメ化されました。

 『とある科学』は『とある魔術』にあるような問題は、かなり解消されています。

・主人公が御坂美琴

・科学サイドだけが舞台の超能力者

ということで、設定も判りやすいですし、上条当麻の中二病気質も大分抑えられています。

 それどころか、白井黒子が百合色全開の面白キャラを貫いているので、笑いがかなり多い!

 ちなみに、ネット上で御坂美琴について「お嬢様学校なのにミニスカート」という考察サイトがありましたが、それは違います。

 かなり高速に厳しい全寮制中学校で、しかも、御坂美琴が服装について指導を受けている場面もなく(校則通り、野外でも制服。デートの際にも。)、さらに他の中学校の生徒がロングスカートであること、等から常盤台中学はミニスカートが校則であると推察できます。

 その理由については作中で述べられていませんが、学校の創立者か今の運営者かが特殊な趣味をお持ちなのでしょう。

 御坂美琴が特に露出の多い服を好みにしているわけではないことは、水着を選ぶ時の選択や、スカートの下に短パンを履いていることでも明白です。一方、白井黒子は御坂美琴の露出度を増やそうと企んでいるようですが、スルーされています。

 私は露出度の高い女性が嫌いで、リアルでもツインフレームが袖なしの服を着た姿をプロフにした際は「超美人が台無し・・・」と思ってしまったものですが、御坂美琴も露出度が低いからこそ、可愛いキャラを演出できていると思います。

 もしも白井黒子趣味の服でも着せられようものならば、正直、土御門元春の趣味の服装をさせられた神裂の末路のようなことになると思います。

 最近のラノベにはやたら露出度の高い女性が登場しますし、『とある魔術』もそう言う感じですが、『とある科学』はそういう悪癖を抑えていることも、長所です。

 学園都市の学校は意外に創立者なり運営者の変な趣味が反映されていると思います。

 例えば、繚乱家政女学校なるトンデモナイ名称の女子校があります。そこの生徒である土御門舞夏は超優秀なのに、なぜか「エリートメイド」を目指しています。普通、優秀な家政婦が目指すべきはハウスキーパーだろ!というツッコミが無いのはどうしてでしょうか?

 まぁ、日本はイギリス文学を翻訳する際に、本来「家令」とあるべきところを「執事」と誤訳してしまうことがある、という都市伝説のある国です。「ハウスキーパー」と「メイド」の区別がつかないアホがオタク界隈にいるのは理解していますが、専門の学校がそんな基本中の基本を理解していないはずがないので、校長が「ハウスキーパーよりもメイドだ!」という特殊な趣味をお持ちだとしか、思えません。

 あ、念のために言っておくと『アルプスの少女ハイジ』のロッテンマイヤーさんはハウスキーパーであってメイドではないからね!その程度の常識もない方が家政学校の教師陣にいるとは、思えません。(さらに念のために言っておくと、ここでいうハウスキーパーとは戦前の日本共産党にあった制度ではありません。)

 さて、話が逸れたので御坂美琴に戻しましょう。御坂美琴の魅力としては

育ちが良すぎる(着替えるためだけにホテルの部屋を二人分借りる発想と経済力)

高校生の夏休みの宿題を手伝えるレベルの超優秀な中学生

・実は料理が得意

→もっとも、お嬢様だけあってプレゼントには「一番高いクッキー」を選ぶ(「手作りクッキーが良かった」by上条当麻)

・人並み以上の正義感と交渉力

でしょうか。特に、超能力開発のために薬物を投与されているのに、全く精神がやられていないのは驚愕に値します。

 事実、御坂美琴は超能力が最高の「レベル5」なんですが、御坂美琴以外のレベル5は薬物投与の副作用か、みんな精神が逝かれているのです。

 御坂美琴の超能力には先天的な素質もあることが作中で述べられていますが、一方で、超能力がレベル5に到達するにはかなりの努力を必要としたようです。なお、超能力の傾向は先天的に決まっており、御坂美琴の場合は電気を自由自在に操る超能力です。

 なお、作中に重力系の超能力を使う人がいましたが、重力は電磁力よりもかなり弱い力であることを考えると、彼の方がパワー的には御坂美琴よりも上、というか、作者が完璧文系脳で理系の知識に欠けていることが推察されています。

 さて、御坂美琴は正義感から動く人間で、上条当麻みたいな中二病的な価値観は持っていません。

 中学二年生よりも中二病な高校生がいるのもどうかと思いますが、そうした御坂美琴の特色も『とある科学』を読みやすくしています。

 ただ、『とある科学』一番の見どころは白井黒子でしょう。

 私が小説で一番好きなキャラクターは『十二国記』の氾麟です。(アニメ版には登場していません。)

 一方、アニメだと間違いなく白井黒子です。いや、恋愛対象には絶対になりませんが。(黒子はレズビアンだし。)

 あの、御坂美琴への愛情は本当にすごい。ただ、あの変態趣味だけは・・・共感、できません。(笑)

 白井黒子はその致命的な変態趣味を除くと、一番感情移入しやすいキャラクターだと思います。

 「仲の良い友達に片想いした」というシチュエーションでの、片想いの気持ちをとてもリアルに表現しています。そして、白井黒子の恋愛感情に気付いていながら「大親友」として扱っている御坂美琴。恋愛あるあるですね。

 もしも、これが片想いしているのが男性だと「ストーカー」で終わりですが(黒子が男性でも美琴は親友扱いしそうですが)、百合キャラなので一気にコメディ化します。そういう意味でも、『とある科学』は最高の設定です。


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