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極めて不本意なことに私は日本語以外の言語に堪能でなく、キリスト教についても日本語訳の聖書しか読めないし、仏教についてもそうで(漢文ならばなんとか読めるが)サンスクリット語やパーリ語はさっぱり、と言う状態である。
ましてやアラビア語で読まないといけない『コーラン』等未知の領域ではあるが、日本語で漏れ聞くところによるとイエス・キリストもムハンマドも素晴らしい人であったらしい。マーシャー・アッラー!
それはともかく、肉食の是非についてキリスト教の『聖書』の解釈が良く問題になる。『聖書』は肉食を肯定している、だからやはりキリスト教は野蛮だというヴィーガンの方も多い。
さらには左側の方はそこから宗教批判に発展する。左翼系ヴィーガンの方には「どうして宗教を尊重しなければならないのか、むしろ無神論を押し付けるべきだ」という新無神論の立場に立つ方が多い。
一方、右翼系ヴィーガンの方はむしろスピリチュアルなものが好きな方が多い。それは結構なことであるが、キリスト教については「だから一神教はダメだ」という方もいる。それを言い出すと仏教も一神教に分類する人はいるし、多神教の信者にも肉食者がいるし・・・・と思うのだが。
いずれにせよ、今のキリスト教会が肉食を肯定しているのは事実だ。ユダヤ教やイスラム教もヴィーガンという訳ではない。この3つの宗教の共通の聖典である『旧約聖書』にはこんな記述もある。
アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。
アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主はアベルとその供え物とを顧みられた。
しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。
そこで主はカインに言われた、「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」。
ここでいう「主」とはヤハウェのことだが、ヤハウェはカインが供えた耕作された植物のお供え物では喜ばず、アベルが供えた羊の生贄を悦んだらしい。それでカインは怒ってしまう。
それにしてもヤハウェの言いよう。まるで動物をお供えすることが「正しいこと」で植物をお供えすることが「間違ったこと」みたいな言い方ではないか。
神様にそんな態度を取られたら私だって憤ってしまう。
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ところでこのヤハウェ、日本語の聖書では「主」とか「主なる神」と訳されているが、実は本来の神なのかと言うと疑問がある。
『聖書』では「エロヒム」と「ヤハウェ」が使い分け割れている。エロヒムは日本語聖書では単に「神」と記されている。
試しに「創世記」第一章を見て見よう。
神は自分のかたちに人を創造された。すなわち、神のかたちに創造し、男と女とに創造された。
エロヒムと言う神様は自分の形に似せて人間を創造されたそうです。そして男も女も同時に創造したわけです。
じゃあ「主なる神」とは言うと、「創世記」第二章に似た話が書いてあります。
主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。
ヤハウェという神様は人間を塵で作ったそうです。ちょっと待て、『旧約聖書』って一神教のはずだが、エロヒムとヤハウェってどうも違うことをやっていないか?と思った方は鋭い。
そこで主なる神は人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所を肉でふさがれた。主なる神は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところへ連れてこられた。
そのとき、人は言った。「これこそ、ついにわたしの骨の骨、わたしの肉の肉。男から取ったものだから、これを女と名づけよう」。
第一章ではエロヒムは男性と女性を同時に自分の姿に似せて作ったはずが、第二章では男性の肋骨から女性が誕生したことになっている。ちょっと様子が違うというか、素直に読むと明らかに矛盾している。
さらにエロヒムとヤハウェには決定的な違いがあります。
神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。
エロヒムが作った世界ははなはだ良かったそうです。人間も動植物も神様が作ったのだから「はなはだ良い」はずです。
ところが「主なる神」であるヤハウェはそうは思っていないのです。
主は地の上に人を造ったのを悔いて、心を痛め、「わたしが創造した人を地のおもてからぬぐい去ろう。人も獣も、這うものも、空の鳥までも。わたしは、これらを造ったことを悔いる」と言われた。
これは「ノアの大洪水」の話ですが人間どころか、動物まで造ったことを後悔しています。「はなはだ良い」どころか、「はなはだ悪い」とでも言いだけです。
このように「神」(エロヒム)と「主なる神」(ヤハウェ)は明らかに別の神なのです。
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先ほど仮に「別の神」と言いましたが、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も一神教です。
さぁ困った、神様は唯一絶対の存在。どちらかが唯一絶対の神であるならば、もう片方の神様はニセモノの神。『聖書』にはホンモノとニセモノの神様が混在していることになる。
ところがこの問題の解決は実は簡単なのだ。
ちょっと頭を働かせれば、このヤハウェなる存在が「ホンモノの唯一絶対の神」のわけがない。
なぜなら神様は唯一絶対の存在。唯一絶対の神が作る世界は完璧な世界に決まっている。あとから後悔するような、欠陥品の世界を作るのは唯一絶対の神のわけがない。
すると「はなはだ良い」世界を作られたエロヒムこそがホンモノの神であり、後で自分が作った世界を後悔したヤハウェはニセモノなのだ。
考えても見てほしい、自分が世界を作っておきながら
「私の作った世界は欠陥品だった!こんな人間や動物を作ったことはマチガイだった、後悔している。」
と言って洪水を起こすような存在が唯一絶対の神だろうか?
無論、貴方がそれでもヤハウェを唯一絶対の神として信仰したり、エロヒムとヤハウェが同じ存在であると考えたりするのであればそれでも良い。私は信教の自由を侵害するつもりはない。
ところでヤハウェは羊の生贄がお好きであったようだが、ホンモノの神であるエロヒムは違う。人間に対して菜食を勧めているのである。
神はまた言われた、「わたしは全地のおもてにある種をもつすべての草と、種のある実を結ぶすべての木とをあなたがたに与える。これはあなたがたの食物となるであろう。また地のすべての獣、空のすべての鳥、地を這うすべてのもの、すなわち命あるものには、食物としてすべての青草を与える」。そのようになった。
これを見る限り、神は人間と動物に植物を食べ物として与えたのである。動物の肉を食べることを許可したわけではない。
このこと一つとってもエロヒムとヤハウェは明らかに性格が異なるのだが、いずれにせよ『聖書』の神様の言葉としてこれが記されているわけだ。
それではどうしてキリスト教やユダヤ教では肉食を肯定しているのだろうか?
その理由の一つはエロヒムとヤハウェの混同であるが、それだけではない。
このことは有名な「エデンの楽園の追放」と「ノアの箱舟」の話と関係してくるのである。続きは明日のブログで。
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